恋してる、生きていく(夕映月子)

2019年10月9日

ボーイズラブ・レビュー

夕映月子さんの新刊です。
新刊というにはちょい日が経ってますがそこはご愛敬ということで。

彼女の作品は、けっこう刊行スピードがゆっくりで特にデビュー作から2作目までが長くて、私は一人でハラハラドキドキしていたのでした。
デビュー作は「天国に手が届く」で、登山ものBLでした。
これが……↑前のブログに飛ぶんですが、読んでいただければ分かると思うんですが、好みドンぴしゃだったんですよねー。
お話の内容もそうなんですけど、文章に漂う空気がすごく好みで、もっと読みたいって思っていたのです。

で。
そでで、ですよ。
今回のこの本、実は夕映さんのデビュー文庫の前の雑誌掲載作に加筆修正+書き下ろしが加えられた1冊なんです。
デビュー作と同じく山を舞台にしたボーイズラブなんですが、ずーーーーっと文庫になってなくて、私はなんとかゲットした雑誌の作品を読んで、

ここで終わるんかよ!!!!!!!

って悶えてゴロゴロして、続き、続きくださいはやく……状態のまま年単位で正座待機していたのですね。
それがようやく報われたのです。

うん、やっぱりBLだからね、BLなんだから必要なことっていうのはあると思うんだよねうん!

以下ネタバレ妄想注意!

紹介文です。


生まれつき心臓が悪い梓は、登山を愛する穂高に惹かれつつ、寄せられた想いを受け入れられずにいた。日常生活にこそ不自由しないが、梓の体は恋人と触れ合うのに制限があり、命の期限は恐らく人より短い。だからいつか訪れる別離を恐れながら恋人になるより、友人として穂高のそばにいたかったのだ。けれど穂高から諦めませんと告げられた少し後、穂高が登った山で滑落事故があり…?胸を打つ純愛スロウ・ラブ。

ふふふ、病弱繊細美人受ですよ!
ボルゾイの散歩が似合う受とかもう天然記念物ものだと思います。
心臓に病気を抱えた梓は、山の麓でホテルを営みながら、客の一人であり自分に思いを寄せてくれる穂高と、友人として付き合っていました。
両想いなのに片思いなパターンです。
相手が自分を好いてくれている、自分もその相手を好きだと気付いた……なのに受け入れるのが怖い。
お話全体を通じて、梓の揺れて少しずつ動いていく心が切なくて愛おしいです。

梓は、普通の人より飛び越えないといけないハードルが多くて、ずいぶん躊躇います。
それでも、穂高が死んでしまうかもしれない……自分が死んで永遠に会えないのではなくて、自分が残される可能性だってあるという現実を突きつけられてひとつめのハードルを跳び越えます。

そして、自分が先に……という恐怖と、健康になってずっと穂高といたい、同じ景色を見たいという前向きな希望などなどを原動力に、心臓の手術に踏み切ります。
そして、完治して健康体を手に入れ、ふたつめの大きなハードルを乗り越えました。

男同士というハードルは、もっと前にクリアしていたので、もう彼らを阻むものは何もありません!

一緒に山に登ってください。
一緒にベッドでギシギシしてください、いいぞもっとやれ!!!
好きな人と肩を並べて歩けるというのは素敵なことですね。

お察しいただけるかと思うのですが、雑誌の段階ではベッドでイチャラブが寸止め&朝チュンという鬼畜プレイだったのですね……。
ようやく本懐を遂げられて大変満足です。

ちなみにちょこっとですが、「天国に手が届く」のカップルも作中にひょっこり顔を出してくれています。

純愛な作品であると同時に、読者への焦らしプレイにピリオドを打ってくれたありがたい1冊でございました。