けむにまかれて(市ヶ谷茅)

2019年10月9日

けむにまかれて (フルールコミックス)
市ヶ谷茅
KADOKAWA/メディアファクトリー

ボーイズラブコミック・レビュー


オヤジっつかもうおじいちゃん、みたいなビジュアルのインテリメガネ小説家ですよ。
煙草の煙を燻らせながらの流し目、凄まじい色気ですね!
畳の部屋とセピアがかった画面が素敵すぎました。
どう考えても後ろで正座してる若者わんこが掌で転がされてますね。
これねー、表紙見て、おっとどっちが攻だ???
ってなったんですが、皆さんどっちだと思いましたか?

さて、もう表紙から名作BLの気配が漂っております。
これがデビュー作っていうんですから、ボーイズラブ業界もまだまだ捨てたもんじゃないと思えます。
他のBL作品も読んでみたいです。

以下ネタバレ妄想注意!

紹介文です。

「男は好きになれない。――でも、君のこと気に入っているんだ」
ゲイの編集者の若尾は、ベテラン時代小説家・刃渡光顕の担当になった。若尾にとって刃渡先生は子供の頃から憧れの人。原稿を受け取るだけでも胸の高鳴りを止められないのに、煙草の煙に交じって独特の色気をくゆらせる先生に、翻弄されてしまう。そして、胸に秘めた淡い恋心は、早々に見破られてしまい――…
恐るべき新星、市ヶ谷茅のデビューコミックス!連載作品に加えて、描きおろし後日談「夏のそれから」を収録。

この手練手管の老作家はね、健気に取り繕えもせず告白した担当編集の若者を一瞬の躊躇いもなく振った直後に、好きには慣れないけど側を離れるなとか、Sっ気前回の鬼畜発言をかましてくれたんです。ひでええええええええ! ってなりました。
憧れの作家先生の作品だけじゃなくて本人まで好きになったのにあっさり断られて、仕事上もそう簡単に離れられない針のむしろ状態になった若尾、さすがにちょっと可哀想になります。

見えない尻尾をぶんぶん振り回す若尾が大変お気に入りだったんですが、なんと私の予想に反して彼、受だったんですよね。
ジジイ攻ですよジジイ攻!! じーちゃん元気だな!!!!
最近は下克上系統のBLが流行だったので、ちょっと意外な掛け算でした。
小学校の掛け算の前後ろはまったく気にしませんが、ボーイズラブにおける掛け算の順序にはこだわりがございます。

ただまあ私、タイバニではコテバニでオヤジ攻も大好物ですので、フェイント食らっても特にダメージはありませんでした。

自分の魅力を知り尽くした手練れのジジイ攻……。
いいじゃないですか、めっちゃ魅力的ですよ!

結局このジジイ、さんざん焦らして、すわ破局か!? というところにきて突然、他者で発表した新作で作中告白をぶっこんできました。
こんな遠回しかつ乙女チックな告白をこの御年で!
計算ならこの狸めって思うんですけど、なんかこのじーちゃん、照れてるんですよね……。いざ若者を押し倒すときは「君を僕の好きなようにしたくてたまらない」とか攻様100%な台詞を吐いたんですけどね。
これは一種のギャップ萌かもしれません。
このジジイ、萌の多重奏物件でしたわ。

敷き布団でのギシギシも色気に溢れててほんともう、ごちそうさまでした。