Mr.α ミスターアルファ(夕映 月子)

Mr.α【Amazon.co.jp限定特別版】(イラスト付き) (CROSS NOVELS)

ボーイズラブ・レビュー

こんなに、もっと早く感想を書いておけばよかったと悔やんだことはかつてありません。機を逸してしまった気もしますが、今書かないともうこの先書けない予感がするし、昨年、一番萌えた作品でもあり、やっぱり自分で感じたことは記しておきたいと思ったので、感想として残します。



オメガバースで、高校時代の先輩後輩として出会って付き合った後に自然消滅し、お互いが社会人になってからの再構築という再会ラブでもあります。

どこから見ても完璧なアルファである章吾は、高校時代に付き合っていた後輩・日和が忘れられず、連絡が取れなくなった後もずっと思い続けていました。

一方の日和は、憧れていたものの平凡なベータである自分には手が届かない存在として認識していた章吾に告白され、驚きながらも最終的には付き合うことに同意します。しかしすれ違うことが多くなり、久々に会いに行ったところで章吾がオメガの女優と部屋に入っていくところを目撃してしまい、章吾は自分よりふさわしい相手を見つけたのだと思って身を引くことに決めます。

高校時代の思い出として日和の中では処理されていた恋ですが、嫌いで別れたわけではないので、社会人になって思わぬところで再会し、熱心に口説き落とされて落とされて、完璧な俳優としての仕事ぶりに当てられ、もう一度、付き合うことに。それでもいずれは、アルファである章吾に見合う相手が現れたら関係が終わるものというバリアを張っています。

「王者の風格」という花言葉を持つキングプロテアが似合いすぎる完全無欠のアルファでありながら、日和にはめっぽう弱くてなかなか強く出れない章吾は、紛うことなきヘタレ攻といえるでしょう。受にだけ弱い攻ってもろにツボなので章吾には好意しかありません。

大人の分別もありながら気持ちが溢れることもあり、日々の生活の中で揺らぐ日和の感情がとても丁寧に追いかけられていて、切なくなったりほっこりしたり、日和目線で章吾に胸キュンしたりととても楽しい作品でした。平凡なベータだからこそ、フラットにアルファである章吾を好きになれたのだと思えるし、そんな日和を、アルファの強烈なフェロモンでオメガに転換させてしまった章吾さんはさすがとしか言いようがありません。

アルファとしての章吾は、運命の番を見つけるのではなく、愛した相手を運命の番に変えてしまったのです。ヘタレ攻のくせにすさまじいスーパー攻様っぷりではありませんか。

ほのぼの癒し系の雰囲気のお話でありながら、かなり情熱的な剛腕で恋が成就するこのギャップも大好きです。
お話の随所に出てくる植物の描写も、家庭菜園好きには楽しいところでした。ご自身が植物好きでなかったら、エアプランツやらパルダリウムやらビカクシダ、ネイティブフラワーなんてワードは浮かんでも来ないと思います。出てくる植物名から、アレンジの仕上がりを妄想するなどボーイズラブじゃない部分でも楽しませてもらいました。
素敵なお話をありがとうございました。