愛の本能に従え!(樋口 美沙緒)

2019年10月9日

愛の本能に従え! (白泉社花丸文庫)
樋口 美沙緒
白泉社 (2015-08-20)

ボーイズラブ・レビュー

虫シリーズの新刊です。
生き残るために人類が虫と融合してそれぞれの虫の特性を引き継いでいるというなかなかの設定です。
強い種族と弱い種族がいて、それぞれハイクラス・ロウクラスと呼ばれていますが、今回はハイクラス同士のカップリングです。
ちなみに虫のカップリングとしては、オオムラサキ×ナナフシとなります。
何いってんのかわかんねえ! という皆様ご安心ください。
ちゃんと二足歩行する人間として産まれてますので、普通のボーイズラブとしてお楽しみ頂けます。

以下ネタバレ妄想注意!


紹介文です。

女であることが至上の一族に生まれ、最後の砦だった性の異形再生にも失敗したハイクラス種ナナフシ出身の歩は、卒業まで性交渉しないと約束させられ、一族を追われる形で星北学園に入学した。目立たないことが取り柄の自分は、誰にも必要とされないと途方に暮れていたそんなある日、ハイクラス種オオムラサキ出身の大和と寮で同室になることに。野性的な大和に憧れていた歩は胸を高鳴らせるが、大和とその従兄弟の寝取りゲームにまきこまれ、強引に体を開かれてしまう。すると、禁忌を破った歩に思いがけない変化が!?


ナナフシって隠れて生きるのが種族の至上命題なんで、とにかく気配が無くて目立ちません。
個体ごとにある匂いもなくて、匂いで個体判別する向きのあるハイクラスのメンバーの中でもマジ空気です。
あらゆる場面でスルーされまくるナナフシちゃんなので、転がり込んできた攻の同室者にもなかなか気付いてもらえません。

子供も作れない身体に産まれ、全滅寸前の没落貴族っぽい家からは疎まれて絶縁寸前。
女になるための手術にも失敗して、もう一生一人でひっそり生きていこう……とBLが成立しないような思考回路で生きてきた切ない歩くんですが、テニスの有名プレイヤーであるオオムラサキの大和に恋しています。

で、オオムラサキってどうやら縄張り意識が強くて寝取り寝取られな種族本能があるというやっかいな生態をもっているようでして。大和はイヤだと思いながらも従兄弟との間で校内でゲットした男を共有させられたりしていたんですね。
あれです、恋は知らないけど経験だけは豊富というやつです。

ほとんど事故みたいに最初の関係に至った歩と大和ですが、歩は外来種のナナフシの血を半分引いており、一度でも性交渉をしてしまうと、なんと3日おきに発情してしまう身体になってしまったのです。
責任取るよという、なんのありがたみもない流れで恋した相手に3日おきに抱かれる歩。
自覚なしのまま歩に恋していった大和。
未熟な精神でこういう関係にいたって幸せルートをいける確率はけっこう低いですよねーそりゃそうだ。
当然のように一度は関係が破綻します。

歩は薬で発情を抑え、大和は歩に新しい男ができたと勘違いして、テニスの調子ががた落ちに。
大和、メンタル豆腐すぎですよ……。
周囲が良い人だらけで、なんとか再び繋がる2人です。
歩から励ましメールを貰った途端に試合に全勝しちゃう大和。
面白いくらいわかりやすい攻だな!!!

どちらも素直な性格なので、切ない雰囲気を漂わせつつ深刻になりすぎないで読みやすいお話です。
しかし、半分血が混じっただけで3日おきに発情して誰彼かまわずフェロモン垂れ流しちゃう外来種のナナフシ……いったい……純血種の父親はどんな人なのか、溢れる好奇心を抑えきれません。